(2020.3.16 月)
夜半録画映画三本春の闇 美和
昨日今日児連れの父の目立つ春 昭
スパノバの光は未だ春の闇 直路
春嵐子らの通わぬ通学路 利保
(2020.3.17 火)
子のおらぬ校庭広し春の鳶 美和
昨夜よりすこし大きな春の月 昭
うららかやカルガモの子の小さき足 隼人
恙無き明日を祈りて花を待つ 利保
木の芽晴ターザンロープ滑空す 智恵
(2020.3.18 水)
少年のポケットのカオス春の空 万紀子
少数派多数派のあり春の雲 美和
にわか雨それぞれに濡れ筆の花 利保
病窓に児を抱く父春寒し 昭
春寒や急須に開く台湾茶 彩香
卓袱台のコップに活けて花薺 美和
(2020.3.19 木)
しゃらしゃらとぺんぺん草に耳を寄せ 万紀子
寄書に貼るは四つ葉のクローバー 美和
コッペパン二つに割って花の宴 利保
春寒し断捨離まだかと妻の問ふ 昭
ものの芽もはや七センチ伸びてをり 薫
(2020.3.20 金)
亀鳴くや手の平天へ伸びをして 美和
ポプコーン抱えきれずに木瓜の花 利保
囀りのなかに一日はじまりぬ 昭
鷹鳩と化して強雨に膨れをり 隼人
あれやこれやとお彼岸の一日過ぐ 美和
(2020.3.21 土)
夜の底に沈みはじめり初ざくら 聡子
天の戸に初花の震へてゐたる 美和
グラウンドに「沈黙の春」過ぎゆきて 直路
寂しさよ座布団飛ばぬ浪速場所 利保
切通抜けて春光由比ガ浜 昭
(2020.3.22 日)
砂浜を小さき裸足の春の跡 美和
風光る胸の振子が揺れる朝 利保
春分の風に生成りのバスタオル 智恵
木蓮に残りし雨の重みかな 彩香
(2020.3.23 月)
笑う児のほっぺを撫でて春の風 昭
のどけしや人気一番コッペパン 美和
花冷の端の欠けたるベンチかな 利保
海棠の紅い涙に立ち止まる 昭
涙腺の緩んでゐたり花の夜 美和
のどかさやねこのおでこに日のたまり 彩香
(2020.3.24 火)
手作りの玻璃の歪みや春日射し 美和
花冷えの雨聴く夜の漁師町 利保
暖かや朝の珈琲飲む窓辺 昭
(2020.3.25 水)
閏年なれど開かぬや花の冷え 薫
花冷の夜を飛び交ふ延期の報 美和
花冷えに腕組みを解く老庭師 昭
銭湯の富士山渡る春の風 利保
海越えて国境越えて石鹸玉 智恵
県境に川の名かはる涅槃西 勝彦
(2020.3.26 木)
命名の半紙一枚うららけし 美和
点滴の白い滴よ春の朝 利保
弟に桜咲いたと告げる姉 昭
木々芽吹き花咲く日々や家籠り 直路
図書館の灯りこぐらき花の昼 聡子
アメージンググレースを聴く花の昼 草もち
(2020.3.27 金)
図書館の試聴ブースに春深む 美和
病室の窓に一羽の燕かな 利保
密よりも疎がうるはしき花筏 穂積
揺れ動く樹々のはざまに春の月 昭
縄跳びを一間おきて春夕焼 勝彦
春一番白波見つつ縄を綯ふ 美和
主の亡き犬小屋の屋根樒ふる 万紀子
日曜のなんにもなき日春めけり 聡子
(2020.3.28 土)
低い空雲を切り裂く燕かな 利保
読みかけの本はじめから春の昼 昭
春荒の午後をゆるりと読了す 美和
小賢しきプログラム組む春の昼 穂積
(2020.3.29 日)
燕来よ嬉しきことを届け来よ 聡子
歌声の遠ざかりゆく春時雨 万紀子
声援の真つ直ぐ届く春日かな 美和
アブェマリア胸を潤す春の雨 利保
休日の街静かなり春の雪 草もち
紅色の待針はづす春の昼 智恵
剥がれたる禅語の掲示春寒し 穂積
春の雪廃車おおいて静かなり 昭
全快の手荷物軽く春の雪 勝彦
三蜜を避け巣篭もりの春の雪 直路
(2020.3.30 月)
鳥の巣の中の仔細を五階より 美和
旅鳥の翼を濡らす名残雪 利保
枝先の蕾ふるえて春の雪 昭
桜隠しやアイーンに訃報の二文字 隼人
訃報など雪中梅の二人づれ 勝彦
言葉からこころを繋ぎあたたかし 聡子
あたたかし島動かぬと知りたる日 勝彦
幸せの王子のうろを燕舞ふ 勝彦
花冷えのもと園児たち声高に 昭
(2020.3.31 火)
題名に「幸福」と付しあたたかし 穂積
「何だ、バカヤロウ」の声や雪の果 穂積
明けの朝手のひらほどの名残雪 万紀子
一つずつ名札を書いて春の昼 美和
ひとひらの滴集めて花筏 利保
花々はみな咲きそろい三月尽 昭
道端にふわり寄せあふ花の塵 薫
転勤のマスクの息子見送りて 穂積
花筏風吹けばまた進みゆく 聡子
(95句)