2024/10/16 (Wed)
十三夜動かぬ父の金時計 利保
乗り換へに長き秋思の地下通路 桜子
ベランダに風の音する夜長かな 美和
帰る秋アダンの実る海辺かな 利保
男気なをんなが好きと十三夜 なお
コルドバも白き街並み秋の昼 穂積
2024/10/17 (Thu)
秋冷の墨書余白の徒ならず 美和
ブルージュの旧街かこむ水澄めり 桜子
柿紅葉砂場に小さき山ひとつ 利保
手暗がり「スボ手牡丹」といふ花火 なお
紅葉やダムに沈みし部落あり 穂積
2024/10/18 (Fri)
夜半の秋エンドロールに名を残し 利保
ポケットにビスコ小袋秋うらら 彩香
ホットケーキ焼く卵殻にすがる虫 桜子
虫の闇はてなく思ゆメメント・モリ なお
秋うららグリコのおまけ宝物 穂積
2024/10/19 (Sat)
袴付きどんぐり仕舞ふ宝箱 美和
噴煙の流れ秋日の物産館 美和
カステラを焼くよぐり・ぐら秋うらら 美和
秋うらら鉄腕アトムは科学の子 利保
秋の蝶舞ふといふより乱れあふ 桜子
どんぐりの帽子とれたと泣く子かな なお
2024/10/20 (Sun)
合歓紅葉絵を描く人のベレー帽 利保
木の実さまざま輪飾りの並ぶ店 桜子
金風やいまこの風のことぞなもし なお
さやけしや截金残る毘沙門天 美和
爽やかや仁王の脛に風の往く 勝彦
2024/10/21 (Mon)
螳螂の脛枯れ尾枯れ眼枯れ 利保
ふはふはと風と光の枯尾花 美和
朝寒や珈琲の香のほんわかと 桜子
秋の壁を家守ゆっくり登りける 比呂
丘ひとつ美しきかな花芒 なお
2024/10/22 (Tue)
猫の来て手枕される星月夜 桜子
虫食ひの青い朝顔古い橋 利保
地下道の灯りちかちか残る虫 美和
虫すべる木肌も指もそぞろ寒 なお
泣くことの少なくなりてそぞろ寒 勝彦
2024/10/23 (Wed)
人生は泣くこと多し暮の秋 穂積
雁渡し泣いてかきこむ飯の味 利保
鰯雲下車まちがへしローカル線 桜子
千年の昔も秋の長谷詣で 比呂
別れ蚊のしづかに落ちてゐたりけり なお
秋の蚊に血を吸はれたるハノンの手 勝彦
晩秋や句会にほてる渋谷行 勝彦
養父母の愛情深し秋の暮 穂積
2024/10/24 (Thu)
老眼に乱視と遠視秋の暮 利保
来し方の視界あれこれ菊日和 桜子
既視感の土手の光の夕薄 美和
秋の日や来世往生てふ教へ 美和
しづけさの秋の夕暮れ指の音 なお
2024/10/25 (Fri)
秋の燭ピアノの蓋に映り込む 聡子
灯火親し壁にはセピア色の地図 美和
秋寂ぶや海図に遠い波の音 利保
短編の終ひじんわり灯火の秋 桜子
折り紙の恐竜王国秋灯下 智恵
白秋忌カフェ邪宗門の灯のゆらぎ なお
入国に宗教を記す穴まどい 勝彦
棒磁石抜けば砂鉄に蛇笏の忌 勝彦
2024/10/26 (Sat)
鳥渡る空国境は海の中 美和
鳥渡る十五年目の通院へ 桜子
送船海亀帰る浜辺かな 利保
瞬けば鳥渡りけり海のとほく なお
日の匂ふ畑から遠き秋の峰 勝彦
2024/10/27 (Sun)
木犀の匂ひの続く今年かな 美和
木犀や早くも灯油販売車 桜子
冬隣アダモの曲の灯油売り 利保
みはなだの空はやばやと秋陰り なお
秋耕や防災無線に選挙知る 勝彦
2024/10/28 (Mon)
線引きの消石灰の秋湿り 美和
嘘の世を清められるか秋の雨 桜子
敗軍の将は多弁で露の秋 利保
思ひ見るまづ一息やけさの秋 なお
「カワイイ」は共通言語菊なます 智恵
ぼろ市のプリクラ令和の菊日和 勝彦
2024/10/29 (Tue)
プリントの端にメモ書き小六月 美和
おひたしはもつてのほかの紅い菊 利保
菊なます音シャキシャキとふくらむ香 桜子
菊かをる無情の雨となる夕べ なお
2024/10/30 (Wed)
味変ちふ薬味を添へて秋夕餉 美和
行く秋や時は金だといふ男 利保
善人か悪人か秋夜の電話 桜子
朝日影雨後ちふすがし菊の秋 なお
校舎より金の吹奏秋の雲 勝彦
2024/10/31 (Thu)
朝日さす出窓の結露秋の末 桜子
熱々のお結びお握り秋うらら 美和
いつかまたきつといつかは帰る秋 利保
また袖に夜寒の蠅や世は情 なお
火の恋しチョコの銀紙折り紙に 聡子